久しぶりに町の戻ったアスターは、家族から大喜びで迎えられた。
その夜、家族揃って食卓につくとみんなはアスターの村の生活の話を聞きたがった。い
つものようにエメットが部屋の隅に控えている。無関心を装っているが、きっと両耳がひ
とまわり大きくなっていることだろう。
アスターは無難な話からはじめた。村がどんなに変わったか、共通の知り合いのことや
友達のこと。みんなは関心を持っているように礼儀正しく相槌を打っていたが、しだいに
誰もなに言わなくなった。時折、エルダーがアスターを睨みつけたり、うながすようにあ
ごをしゃくったりした。アスターはこれ以上、肝心の話から逃げることはできないと悟り
覚悟を決めた。
「それから、デイジーおばさんはまだ帰ってこない」
「デイジーのことはもう心配してもどうしようもない。これからうまい具合にいけばいい
けど」
ヴィオラがあっさりと言いアスターは驚いた。
「それだけ?」
「まあ、いいから先を続けて」オークがうながす。
「実は村でいろんな幽霊たちと会っているんだ……」
みんながこのことを聞きたがっていることは大体想像がついていた。アスターはみんな
にまるで尋問に会っているような気がしてきた。今までの出来事の差し障りのないことだ
けを話した。ドンやフィンやミリーのこと、幽霊屋敷の子供の幽霊、マシュー先生のこと。
デイジーおばさんのことは話せないしジェシカのことは話す気はなかった。アスターにも
プライバシーがある。
ネリーのときもそうだった。アスターが幽霊の話をしてもみんな驚かない。まるで新し
い知人の話を聞いているような興味をしめす。アスターには助かることなのだが、おかし
いと思うのが普通ではないかという思いはぬぐえなかった。僕の家族の頭の中はいったい
どうなっているんだ?
「で、村にいい娘はいないの?」エルダーがいきなりストレートに訊いてきた。
アスターはたじろいだ。「僕は兄さんのおかげで、そういうことに臆病になっている。
だからそんな気持ちに簡単になれないんだ」
「でも、気になる娘はいるんだろ?」
「もしいても、万が一現れても、兄さんには絶対言わない」
「と言うことはいるのか?」エルダーはしつこい。
「もし、と言った」
「もし、いい人が現れたらぜひ教えてね。例えば……変わった仕事をしている娘とか……
そう言えばマシュー先生のために胸像を作ったのは女の子だと言ってはいなかった?」母
親がたたみかけるように言った。
「みんなおかしいよ! なんでそう僕の恋愛に興味を持つの! 兄さんの恋愛話のほうが
もっと面白いだろ」アスターは叫んだ。
「エルダーのは平凡すぎるわ」母親が真面目に言う。エルダーはちょっと顔をしかめた。
「まあ、まあ、みんな離れて暮すお前のことをとても心配しているんだ。とにかくなにか
変わったことがあったら隠さずに話して欲しいんだよ」父親がその場をおさめた。