10  フィル

 フィルは陰気で神経質な母親のもとで満たされた囚人のように育てられた。父親である
領主はフィルがまだ物心つかないうちに、遠ざかっていた狩猟に取り憑かれたように出か
け、獣に襲われあっけなく命を落とした。祖父がふたたびフィルが成人するまでの後見人
となった。
 館の中でフィルは成長した。何も知らない祖父はフィルの母親としての異常なまでの過
保護をとがめたが、かたくなに耳を貸さない娘にさじを投げた。
 フィルはほとんどの時間を自分の部屋で過ごした。その部屋は館に作られた高い塔の一
番上にある丸い部屋で、すべての方角に窓がついていた。そこで一日中、窓辺に座り外を
見ていた。その中でもある女の子を見るのが一番好きだった。目の色と同じ栗毛色の髪を
三つ編みにして頭に巻きつけ、元気でくるくるとよく働いていた。
 ある日、その女の子が果樹園の脇を流れる小川にひとりでいるのを見たフィルはこっそ
り部屋を抜け出した。
「手伝おうか?」フィルは驚かさないように気をつけて話しかけた。女の子は果樹園で取
れた果物を洗っていた。
「あなた、誰?」女の子は顔をあげた。そこには青い瞳と砂を濃くしたような色の髪をし
た青白くて痩せた青年がいた。
「僕の名前はフィリップ、初めまして。君の名前は?」
「わたしはエマ。ずいぶんお行儀がいいのね」エマは首を傾げながら訊いた。「どこから
きたの?」
「君と同じ屋敷からだよ」
 エマは眉をひそめた。「でも、会ったことがないわ」
「僕は君をよく知ってる。塔の上からいつも見てる」
「あなたもしかして、幽霊のフィリップ?」エマは目を丸くした。
「幽霊?なんだいそれ」
「屋敷の噂よ。塔の中には幽霊が住んでいて真夜中、人が寝静まった頃に降りてきて、広
間でしくしく泣いているって」
「ひどいな。塔の中にいるが夜中に歩き回ったりしないし、だいいち泣いたりしない」フ
ィルは憤慨した。
「でも本当にいたのね」エマは笑った。
「失礼だな。まったく」
「わたしが言ってるんじゃないわ。噂よ。でも、あなた本物の幽霊みたいに青白いし、ひ
ょろひょろしてる」
 確かにお日様の下で見ると、生きた人間に見えない。フィルは話を変えた。
「それは何?」
「桃よ、知らないの?」エマは不思議そうに尋ねる。「食べてみる?」かごの中からひと
つ取ると渡した。フィルは手に持った桃をじっと見つめ、なかなか食べようとはしなかっ
た。
「どうしたの? 嫌いなの?」
「僕は……その……生の物を食べたことがないんだ」フィルが食べる物は肉や魚はもちろ
ん野菜から果物、果ては飲み物にまですべて芯まで火が通してあった。
 エマは驚いたと同時になんだかかわいそうになってきた。
「試してみたら? おいしいわよ」エマはフィルの持っている桃を取ると、皮をむいて一
口かじりフィルに返した。フィルも恐る恐る一口かじった。
「おいしい! こんなにおいしい物は初めてだ」感激するフィルを見てエマは笑った。
「そろそろ行かなくちゃ」
「また会いにきてもいいかな?」フィルの顔は真剣だった。
「あなたと違ってひまじゃないの、坊ちゃま。でもそうね、仕事の邪魔にならなければか
まわないわ」エマはこの青白い青年が誰かとうにわかっていた。
「僕が誰か知ってるの?」
「誰も見たことのない領主のひとり息子」そう言うとかごを抱え歩きだしたが、足を止め
つけくわえた。「少しお日様に当たったほうがよさそうよ」
 残されたフィルは外の空気を存分に吸い、あたりの景色をゆっくり眺めたが一度に日に
あたり過ぎたのか気持ちが悪くなってきた。やっとの思いで階段を登り自分の部屋にたど
り着くとベッドで横になり考えた。
 僕は毎日何をしていたんだろう? 

 フィルの生活はほとんど部屋でこと足りるのだが、夕食だけは下に降り母親と一緒に取
った。母親はフィルの顔をじっと見る、まるで観察するかのように。そしてお決まりの会
話を始める。
「調子はどうですか? フィリップ」
「はい、調子いいです。母上」
「何か変わったことはありませんか? フィリップ」
「何も変わったことはありません。母上」
「何か困ったことがあったら言ってくださいね。フィリップ」
「はい、何か困ったことがあったらお知らせします。母上」
 長いテーブルの両端に座り、声を張り上げて話す。お互いの顔もはっきり見えないし、
相手が何を食べているかもわからない。
 母上も僕と同じ物を食べているのかな? フィルはふと思った。
 食事が終わるとそれぞれの部屋に戻る。フィルは母親の部屋がどこにあるかも知らない。

 じっとしていても気持ちの悪さがおさまらず、お腹の痛みがだんだん増してきたのでフ
ィルはベッドの横に下がっている紐を引いた。紐を引くと下にあるフィル専属の使用人の
控え室で鈴が鳴る。間もなく息を切らしながら体格のいい中年の女がやってきた。この女
は長年フィルの世話をしており、若いときはまだよかったのだが、近頃は階段がつらくな
り配置換えを願い出ようかと考えているところだった。
 すぐさま医者が呼ばれ、食あたりと診断された。
 これから何かが始まる、生まれて初めてわくわくする気持ちになったのにそれがこんな
ことになるなんて。フィルはほとほと自分に嫌気がさした。
 扉がノックされいつもの薬がやってきた。「そこに置いといて」フィルはベッドの上で
背中を向けたまま見もせずに言った。
「飲まなくちゃ駄目」
 フィルはがばっと飛び起きた。「エマ!」なんとエマが薬の入ったカップをのせたお
盆を持って立っているではないか!
「どうして君が……」驚いて言葉にならなかった。
 エマは笑いながら言った。「厨房に行ったら薬を煎じるくさい匂いであふれていたから」
「でも、どうして僕のだってわかったの?」
「坊ちゃん専用のやかんで作られていたから。で、ここに薬を運ぶ役目を替わってきたっ
てわけ。彼女に喜ばれちゃった。助かるわって」エマは陽気に言った。
「僕専用のやかん、そんなのがあるのか。僕はなんにも知らないんだな」
 エマは何も言わず、丸い部屋を見渡した。
「下に降りてきたら? 開いてる部屋はたくさんあるわ。楽しい人もたくさんいるし」
「母上がいいと言うかな?」フィルは頼りなさそうな声を出す。
 エマは呆れた顔をした。「薬は置いときますからね。必ず飲んでくださいね。坊ちゃん」
そう言うとさっさと出て行った。
 フィルは死ぬほどまずい薬と寒々とした部屋をかわるがわる眺めた。
 それきりエマはこなかったが、様子を確かめに母親がやってきた。真っ赤な顔をして息
を切らしている母親にフィルは部屋を替わりたいと告げた。母親は自分の年を感じ、横で
同じように息を切らしている使用人の顔を見た。
 すぐに引越しというわけにはいかなかった。移る部屋を決めると床や壁はもとより箪笥
の中から抽斗の中まで全てを消毒し、寝具、リネン、カーテンすべてが洗濯され、部屋中
に虫除けがまかれたのちにやっと入れたのだった。
 フィルの生活は大きく変わった。お日様にあたり、人々に混じり、いままで母親に禁じ
られていたことに片っ端から挑戦していった。生の物を食べることはもちろん、草むらで
昼寝をし、川で泳いだ。その結果何度もお腹をこわし、草にかぶれ、擦り傷や生傷が絶え
ず、しょっちゅう風邪を引いたが決してやめなかった。そして何よりの楽しみはエマと話
すことだった。仕事中だろうとなかろうとエマを捕まえては追い払われる。エマの笑い顔
を見るのが一番の幸せだった。
 ある日、エマが生まれたばかりの真っ黒い子犬を抱いていた。
「どうしたの? この子犬」フィルはそっとさわった。まだ動物に近づいたことがない。
「母親が死んでしまったの。どう、わたし達で面倒を見ない?」
 フィルは目も見えない子犬が恐る恐る差し出した指をなめる仕草にとても感激し、すぐ
さま賛成した。
 ふたりは子犬にブラッキーと名づけ、こっそりフィルの部屋で飼った。エマはひまを見
つけてはミルクを運び、世話のしかたをフィルに教えた。犬が大きくなり部屋に隠してい
ることが見つかるとすぐさま外に出されてしまった。それでも外にいるときはいつも一緒
だった。ブラッキーはフィルの一番の友達になった。失われた日々を取り戻すかのように
フィルは毎日を精一杯生き、楽しんだ。

 自分の手を離れ変わっていくフィルを母親は複雑な気持ちで見ていた。あの出来事が昨
日のように思い出される。だがその思い出は自分勝手で歪んだものとなっていた。
 あの子を守るためにわたしは多くの物を失ってしまった。あの事件のあと、夫はわたし
を避けるようになり、狩りにばかり出かけ挙句の果てにあっけなく死んでしまった。もし、
あの子を差し出していればいま頃、夫は生きていて、わたしはもっとたくさんの子供に囲
まれ幸せに暮らしていたのでは。
 自分がやったことは都合よく忘れ、あのとき感じた子供への愛情は幻となり、いまでは
フィルがすべての不幸の原因であるように思っていた。
 とはいえ、フィルが男の子なのは幸いだった。領主は息子に継がれるものと決まってお
り、後を継ぐ息子がいないときは一番近い血筋の男が継ぐ慣わしだった。いま、館で大き
な顔をしていられるのも次期領主の母親というだけのことで、フィルがいなければ里に戻
されていた。母親はその地位にしがみついた。
 そのためいままでの長い間、またカエルが現れるのではないかとおびえ、子供にも細心
の注意を払ってきた。だがその子供ももはや母親の言いなりになる年ではない。これまで
は無事生きている。だが不安は消え去ったわけではなく、母親は次にやるべきことを考え
ていた。

 フィルはもうすぐ十八歳になろうとしていた。瞳の色と髪の色は濃さを増し、日に焼け、
痩せてはいるがしっかり筋肉は付き、頼りなさが残るものの立派な青年となっていた。エ
マはひとつ年下で、相変わらず活発によく働き、その明るさと面倒見のよさがフィルの大
きな支えとなっていた。年頃のふたりは十分にお互いを意識していたのだが、フィルには
母親という障害、エマにとっては身分が違うという立場からそのことをあからさまにする
ことはなかった。フィルはいずれはっきりとするつもりだったのだがまだ先でいい、いま
はまだこの平和で穏やかな関係を楽しみたいと思っていた。ところがそうはいかなくなっ
た。

 母親はフィルが元気でたくましくなっていく姿を目にしても安心はしていなかった。い
ついなくなるかも知れないという不安が絶えずつきまとっていた。だからこそフィルが正
式な領主として認められる十八歳になったらすぐ結婚させるつもりでいた。母親は何より
も自分の立場を堅実でゆるぎないものにしたかった。それには早くフィルが結婚し、子供
をたくさんつくる必要がある。そうすれば万が一息子に何かあっても次の保障がある。血
筋は途絶えることなく、母親は祖母という地位で安泰になる。
 母親は屋敷に出入りする仕立屋を呼び、内密に息子の花嫁候補になりそうな近隣の娘を
調べるように命じた。体面や体裁を重んじる母親は誰でもというわけにはいかない。見栄
えよりも家柄がよく裕福であること、それから何よりも健康な身体、これらが最低条件だ
った。
 仕立屋は仕事柄多くの女性と接する機会が多い。だからいま条件に合う娘がいないとわ
かっていた。十年後、あるいは十年前ならもっと違っていたかも知れない。やはり遠くの
町や村まで足をのばさなければいけないかとぼやいていると、ぴったりの女性が目の前に
現れた。
 突然、布商人の店にやってきたその娘は濡れたようにつややかな黒い髪を高く結い上げ、
しとやかに振舞い、ひかえめに白い歯を輝かせて、店にある一番上等な生地でドレスの仕
立てを注文した。付き添っていた年配の男はやはりつややかな黒髪をきれいになでつけ、
すべての指に大きな石がついた指輪をはめ、あまり趣味がいいとはいえないが金飾りのい
っぱいついた高価な服を着て、上品に振舞った。ただ相手を値踏みするように目を細める
癖があった。
 娘がレースやらフリルやらスカートのふくらみ具合などの細かい注文を縫子にしている
間、仕立屋は付き添いの男をお茶に誘い、さりげなく相手のことを訊きだした。
 それによると娘は男のひとり娘で男は遠い街の裕福な資産家なのだが街に若い男が次々
に死んでしまうという変な病気が流行り、適齢期の娘の相手がいなくなってしまった。そ
こで娘のために良縁を求めて旅をしているとのことだった。
 なんとも都合のよい話なのだが、田舎の村の純朴な人間である仕立屋は男が指にはめて
いる見たこともないほど大きな宝石や、人を魅了する話し方に惑わされすっかり信じ込ん
でしまった。
 実のところふたりはスリから強盗、詐欺、挙句の果ては人殺しまでなんでもする悪人。
仲間内で男は〈金メッキ〉と呼ばれ、光りものが好きな見栄張りだった。娘のほうはとい
えば本当は男の妹。〈スッポン〉と言うあだ名で呼ばれ、結構年がいっており悪巧みが好
きで執念深かった。名の知れた悪人であちこちから追われているのだがこの田舎町までそ
の噂は届いていなかった。
 悪人の耳は研ぎ澄まされている。どんな小さな話でも聞き逃さない。領主の母親が花嫁
をさがしているという話を聞き逃すはずはなかった。
 ふたりはちょうどそろそろ逃げまわる生活にも疲れはてており、どこかに落ち着こうか
と相談していた矢先だったのでこの話に飛びついた。領主の妻と言うのは悪くない。いず
れすべてを乗っ取ってしまえばいい。そういうことならお手のもんだ。 
 仕立屋は領主の妻にふたりを紹介した。悪人は相手のことがすぐわかる。領主の妻が高
慢で強欲なのが見てとれるとスッポンは従順でちょっと頭の足らない娘を演じた。なんで
も言うことを聞く娘。金メッキは持参金としていままで盗んできたたくさんの金貨や宝石
を披露した。領主の妻はもちろんそれらに大いに惹きつけられたが、何よりも娘の健康で
丈夫そうな白い歯が気に入った。
 フィリップより年上のようだが少しぐらいかまうまい。
 ふたりは用意された部屋でくつろぎながら祝杯をあげた。
「ちょろいもんだな、まったく」
「兄さん、まだ油断できないよ。肝心の婿殿にまだ会っていない。聞いた話によると母親
に頭の上がらない軟弱男らしいけど」
「お前の手にかかればひとひねりさ」
「まあね、年季が違うわ」そう言いながら髪をほどく。しわを伸ばすためにきつくまとめ
ている髷をほどくと妹の顔は一気にゆるむ。その上真っ白で骨さえも砕きそうな入れ歯を
はずすとまるで別人のようになる。その顔は実の兄でさえあまりぞっとするものはなかっ
たが、決して口に出したりはしない。兄は自分よりも妹のほうが残忍になれるのをよく知
っていた。

 フィルがブラッキーをつれて乗馬の練習をしていると母親からすぐにくるようにとの使
いがあった。母親が食事の時間以外に会いたいなんてことは初めてだ。何事かと着替えも
そこそこに駆けつけると小広間で母親と見知らぬ客人ふたりがフィルを待っていた。
「お呼びですか、母上」フィルは嫌な雰囲気を感じた。
「フィリップ、お前もよくわかっているとおり、十八歳の誕生日にお前は正式な領主とな
ります。おじい様も後見人を長年頑張ってくれました。やっと引退することができ、さぞ
かしほっとするでしょう。もっともまだお前に教えることはたくさんあるでしょうから、
もう少し元気でいていただかなければいけませんがね」ここで一息つくとふたりの客人の
ほうを見てうなずいた。
「お父様は思いがけず早く亡くなり、子供はお前ひとりしか残しませんでした。わたしは
お前に何かあったらいけないと細心の注意を払ってきました。そして今日まで無事生きて
これたことをとても喜んでいます。でもまだ安心はしていません。いつまた何かあるかも
知れないと思うと不安で夜もゆっくり眠れないのです。だからお前が領主となる誕生日に
一緒にお前の結婚も決めました。そうして子供を一日も早く持つのです。そうすればこの
屋敷も安泰だし、血筋を絶やす心配をしなくてもよくなりわたしもゆっくり休めます。こ
うしてここにお前のために素晴らしい女性を見つけました」
 そばで礼儀正しく領主の妻の話を聞いていたふたりがフィルに笑いかけた。兄は誠実に、
妹は恥らいながらも慎ましく、とっておきの微笑だった。
 フィルは耳を疑った。それからゆっくり首を振ると、知り合いのようになれなれしく笑
いかけるふたりを睨みつけ、くるりと背を向け荒々しく部屋を出て行った。
「礼儀を教えないと。ごめんなさいね。とても恥ずかしがりやなの」なんの問題はないと
言うように領主の妻はふたりに言った。
 その日から夕食は四人で取るようになった。細長いテーブルの真ん中でふたりの客人は
向かい合わせに座った。四辺にそれぞれきちんとおさまった四人、兄と妹はお互いの顔を
見ることができたが母親と息子までの距離は果てしなく遠かった。フィルは徹底的に皆を
無視した。母親はフィルの態度を無視した。ただひとり紳士を気取った金メッキだけがそ
の場の雰囲気をものともせず、自分達の家系、妹の自慢、これまでの華やかな仕事、これ
からの明るい未来、嘘八百をまことしやかにとうとうとしゃべった。スッポンはおとなし
く控えめな娘を演じ続けていたが、金メッキはその胸の中で恐ろしいまでの怒りが渦巻い
ているのをひしひしと感じていた。一度など口に運んだ肉をフォークともども噛み切る音
が聞こえたほどだった。
 部屋に戻るとスッポンは爆発した。
「なんなの、あのガキは! こっちがおとなしくしていると思って、さんざんわたしをこ
けにしやがって。式を挙げたらすぐに思い知らせてやる。このわたしを怒らせたらどんな
目にあうか」
 いままで妹が落とせない男はいなかった。だからこそ引退する潮時なんだ。兄は改めて
決断が間違いないと確認した。
 フィルもまた生まれて初めて、これ以上ないくらいに憤慨していた。もはや自分の人生
を母親に決められるのは真っ平だ。領主になることはとうに覚悟していた。以前のフィル
ならその責任や束縛を嫌がっただろうが、いまは違う。その日がくるのを心待ちにしてい
た。そのためにいまのままでは駄目だと、貧弱な身体を鍛え、必要な教養を身につけよう
と努力していた。もちろんまだまだ未熟だが、やっと自分の足で歩き始めたのだ。何も知
らずに無知に過ごしてきた日々、それを思うと情けない。いまは早く一人前になることが
自分の意思を通す最善の道だと信じていた。領主になるのはその初めの一歩であり、立派
な領主となり人々に認められたとき、エマに求婚するつもりだった。だがそれはもう少し
先の計画だった。それなのに母親は勝手に見ず知らずの女を連れてきて結婚しろと言う。
フィルはあまりのことに言葉も出ない。フィルに対する母親の関心はずいぶん薄れてきた
と思っていたのに違う方向に進んでいるだけだった。
 あの父親だと言う男は胡散臭い。すぐに細める目付きがいやらしい。それにあの娘とい
う化粧お化け、ずいぶんおとなしいが何か奇妙だ。そして何よりも母親と同じにおいがす
る。
 次の日、フィルは厨房にいたエマを館から離れた池のところまで引っ張って行った。死
んだ領主は池には誰も近づいてはいけないと厳重に言い渡していたので、すっかり荒れ果
て草木が思うがままうっそうと茂っている。
 よそよそしく振舞うエマにフィルはいらだった。
「エマ、大事な話があるんだ」
 だがエマは先を言わせなかった。「おめでとうございます、坊ちゃん。いえ、旦那様。
結婚が決まったそうで」
「知っているの?」
「館はその噂で持ちきりです。以前は旦那様が領主になるのを皆、不安に思っておりまし
たが立派になったいまでは誰もそんなことは言いません。皆、喜んでいます」エマにはい
つもの元気がない。
「エマ、どうしてしまったんだ?」
 どうしたと言われても言いようがない。以前は面倒見ずにはいられないほど頼りなく、
か弱い若者だったのだが、いまでは見違えるほど立派な青年になっている。おまけに今度
正式に領主になる男だ。エマはただの使用人だ。自分の立場は十分わかっている。これか
らはいままでのように接するわけにはいかない。ただ、悲しかった。
「どうもいたしません。でもこれからは旦那様とわきまえた行動を取ろうと思います」そ
れだけ言うとうつむき館に戻ろうとした。
「待てよ」フィルは慌ててエマの両腕をつかんだ。「何言ってるんだ、本気なのかい? 
エマ」
エマは下を向いたままフィルの顔を見ようとはしなかった。
「僕は母上の望むとおり結婚しようと思う。ただし母上が勝手に決めた相手ではない。僕
はエマ、君と一緒になりたいんだ」
 フィルはエマをしっかり見つめた。
「エマ、僕と結婚しておくれ。お願いだ。はいと言ってくれ」
 エマは目を大きく見開いたまま何も言えなかったが、やがてゆっくりうなずくと「はい、
旦那様」と囁いた。エマはとてもうれしかった。同時にとんでもないことを言っている自
分に戸惑っていた。
 フィルは感激のあまりエマを抱きしめるとそのままくるくると振り回し、最後は笑い転
げる始末だった。「旦那様はやめてくれ。フィルだ、フィリップは駄目。これからはフィ
ルと呼んで。さあ、なんだかここは不気味だね、館へ戻ろう。これから僕は母上に会いに
行く」ふたりは手をつないで駆け戻った。
 久しぶりの人間の生気は誰も訪れることのない池に小さな波紋を残した。

 フィルは初めて母親の部屋に入った。窓のカーテンは引いたままで、昼間だというのに
豪華な蜀台でロウソクの炎が揺れていた。館中の財産がここに集められており、さりげな
く置いてある花瓶も絵も調度品もすべて高価なものだと一目でわかった。
 これではおちおち部屋から離れられないな。きっと宝石なんかも厳重に鍵を掛けた金庫
にしまってあるのだろう。フィルの考えは間違っていた。領主の妻は宝石をすべて身体の
見えないところにつけていた。
「何ですか? フィリップ」母は場違いなほどみすぼらしいクッションがたくさん置いて
ある長椅子に座ったがフィルに座るようにとは言わなかった。
「母上、僕は結婚します」握りしめた手に汗をかいていた。いつも母親の前では緊張する。
「わかっています。いま準備をしているところです」母親は怪訝な顔をした。
「違うんです」フィルは手のひらの汗をシャツで拭った。「母上が連れてきた娘ではあり
ません。この屋敷にいるエマと結婚します」
 母親は首を傾げた。「エマ……エマ……。はて、誰でしたっけ?」
「ここで働いている娘です」
「ここで働いている……使用人?」
「そうです。僕はエマとしか結婚しません」フィルはきっぱりと言った。
 母親は目を細めた。「お前は何を言っているのかわかっているの? 領主になろうとい
う男が使用人と? お日様にあたりすぎて頭がおかしくなってしまったのかい?」
「僕は生まれて初めていまが一番まともです。母上、あなたは僕のことなど何も知らない
でしょう」
「何を言うんですか、フィリップ。お前はいままでわたしが大事にしてきた大切な子供で
す」
 フィルは薄暗い部屋を見回した。「僕は母上にとってここにある、あなただけのための
花瓶や、家具と同じだ。だけど幸い僕には口や手や足がある。なんでも好きなことを言う
しやりたいことをする。なんなら出て行くこともできる」これだけ言うと部屋を出た。扉
に寄りかかり、がくがく震えるひざを押さえていると内側から鍵がかけられる音がした。

「クソッ、忌々しい」息子が逆らうのは初めてだった。それどころか面と向かって話をす
るのさえ初めてだった。いままで息子が何を考えているかなんて気にしたこともなかった。
できるものならここにあるもののように部屋にとどめ、必要なときだけ取り出したいくら
いだ。母親は抽斗からナイフを取り出すとクッションをひとつずつ、ずたずたに引き裂い
ていった。クッションがすべてただのぼろきれに変わり部屋中が詰め物の羽根だらけにな
ると、口の利けないお付の老婆の小間使いを呼んだ。
 老婆が部屋をかたづけるのを監視しながら母親は考えた。集めた羽根を入れた大きな袋
を曲がった腰で引きずるよう持って出て行くと、なくなっている物はないかすばやく点検
した。そのときには考えは決まっていた。息子が誰と結婚しようとかまわない。相手が子
供をぼろぼろと生むような丈夫な娘であれば。

 フィルは十八歳の誕生日に正式に領主となる。結婚式も同じ日に挙げる。母親はその日
を変えるつもりはなかった。早速、エマを呼び出した。エマは母親のなめまわすような目
付きの前で神妙な態度を取っていたが、まるで品評会の豚にでもなったような気分だった。
フィルは不安な面持ちをかくしながらエマに寄り添っていた。
 こっちのほうがあのよそものの娘より健康で頑丈そうだ。年もまだ若い。あの持参金を
失うのは惜しいが……しかたない。
「わかりました、フィリップ。お前がそう望むなら許しましょう。なかなか気立てのよい
娘のようだし、何よりも母はお前の幸せを望んでいます」
 フィリップは天にも昇る気持ちだった。認めてもらえさえすれば母親の本当の気持ちな
どどうでもいい。母親を抱きしめ、生まれて初めて母親にキスをした。

 その夜、おさまらないのは悪党兄妹、とりわけスッポンの怒りはすざましいものだった。
母親の予定が変わったのでお引き取り願いたいと丁寧に言う言葉の陰には、早く出て行っ
てくれという気持ちがまる見えだった。だが、スッポンはぜひ一緒に結婚式を祝いたいと
言って残った。母親はあから様に嫌な顔をしたが、お祝いの品を見せると手のひらを返し
たように愛想よくなった。
 その場では物分りのよい良家の娘を演じ、祝福までもして見せたが「このわたしにこん
な扱いをするなんてただですむと思うんじゃないよ」兄とふたりきりになるとスッポンは
頭から煙を出していきまいた。
「まあ、まあ、落ち着け。あの母親は一筋縄ではいかん。これでよかったんだ。上品に育
っているかも知れんがあの女は俺達と同類だ。いまさら結婚式なんかどうでもいいだろう。
こんなとこでぐずぐずしないでさっさと何かめぼしいものをいただいてずらかろうぜ」
「兄さん、馬鹿言わないでよ。このままでは絶対済まさない。わたしをこけにしたらどう
なるか思い知らせるまではどこにも行かないからね」
 こうなった妹にはかかわらないほうがいい。金メッキはこれからの算段をしながら先に
寝た。
 いよいよ、明日は結婚式という夜、金メッキは鞄に盗んだ銀食器、銀の蜀台、花瓶をつ
めその上に持っていた宝石類、洋服、身の回りの物をつめた。
「しけた館だぜ、まったく。なんにもありゃしない。お宝はあの奥方様ががっちり握って
いやがる。おまけに退屈で何もないところだ。ここを離れられてせいせいするよ」
「本当に、何もないところ」
 妹の突き放した言い方にふと兄は訊いてみた。「お前は何をするつもりなんだ」
「そうね、まずわたしが着るはずだった花嫁衣裳をずたずたに切り裂く。それからお祝い
のワインに毒を入れ、館を燃やす。実はね、花嫁衣裳のほうはもうやってきたんだよ」
「そんなことしたら俺達の仕業だと疑われるんじゃないか?」
「大丈夫よ、いろんな動物の毛と足跡を残してきたから。明日が楽しみだね」スッポンは
冷たく笑った。
 おい、おい。 金メッキは呆れたが口を挟むのをやめた。騒ぎが起こればもう少しお宝
が手に入るかも知れない。 
 スッポンは窓辺にたたずみ、このくらいでは物足りない、もっと気持ちがすっとするよ
うな何かをと頭をめぐらせていると誰かが話しかけてくる。振り返ってみても誰もいない。
耳を澄ましてみる。どうやら声は外から聞こえるようだ。
 〈小指の枝〉はカエルの中で長い居眠りについていた。池の底に沈められたときからど
れだけの時がたったのかさえわからない。深い眠りの中で人の気配を感じた。それからゆ
っくりと浮かび上がるように意識が目を覚まし始めた。自分がどこにいるかわからなかっ
たが、しだいに記憶が戻るにつれ、一緒に眠っていた怒りが再びわき起こってきた。
 ちょうどそんなとき、同じように黒く邪悪な念を感じた。――復讐―― 〈小指の枝〉
はその念に波長を合わせ呼び寄せた。
 兄はいつの間にか妹がいなくなっているのに気がついたが、また何か企んでいるんだろ
うと思い先にさっさと寝てしまった。

 翌朝、金メッキはなにやら騒々しい音で目が覚めた。館が慌ただしい。何か始まったな。
起きあがって妹をさがしたが部屋にはいなかった。
 今日は領主即位の式典のあとそのまま結婚式へと続く予定だった。参列者はそれほど多
くない。亡くなった領主とその妻の親族、村の有力者、裕福な商人、これらはもっぱら祝
儀を集めるためにいるようなものだった。その後に馬車に乗って村でのお披露目パレード。
めでたい一日となり村人にも十分なごちそうとワインが振舞われる予定であった。
 母親は胸騒ぎを覚えていた。朝一番、花嫁衣裳がずたずたに引き裂かれていると侍女が
駆け込んできた。そのことは誰にも言わないようにと硬く口止めし、エマの衣装には自分
が若い頃着ていたドレスの中から一番豪華なものを選び、なんとか間に合わせた。
 式典は大広間でとりおこなわれた。祖父からフィルへと領主は無事引き継がれ、やっと
ふたりの待ちにまった結婚式が始まろうとした。フィルはエマの衣装が違っていることに
気づいたが、虫に食われたのよ。横にいた母親からそっと囁かれ納得した。フィルもエマ
もお互いがいれば相手が何を着ていようがかまわない。式はすべて順調に進んだ。
 頬を赤く染めあげ、あふれんばかりの喜びに包まれてふたりは幸せの絶頂にいた。皆が
見守る中、ふたりは向き合い微笑むと、フィルが指輪を取り出しエマの手を握る。参列者
は厳粛な面持ちで息をひそめ、あるいはその輝かんばかりの若々しさにため息をつきなが
ら見つめていた。
 そのとき、大広間の外庭に面した開き扉が大きな音をたてて開き、全員の目が集まった。
 そこには身体中に水藻を巻きつけ、びしょぬれで泥まみれの気持ちの悪い女が立ってい
る。潮が引くように人々が道をあける中、女は服から水をしたたらせながらゆっくりと母
親のほうに近づいて行った。エマに付き添っていた仲のよい友達は怖がって離れて行った。
金メッキはそれが自分の妹だと気がついたが、あまりのおぞましさに声をかける気もしな
かった。
 女は母親の前で止まると「ゲボッ」と水と入れ歯を吐き出した。そしてくぐもったよう
なしゃがれ声で話しだした。
「約束のものをもらいにきたよ」
 母親は恐怖に顔を歪め、口を開くこともできなかった。
「忘れたとは言わせないよ。お前は確かに約束した。お前の子供をわたしにくれると」
 歯のない女の声は不明瞭で聞き取りにくかったが、そばにいるものには十分わかった。
「母上、どういうことですか?」エマを守ろうと楯のように立っていたフィルが母親に近
づいた。
 女は濡れた髪と泥が貼りついた顔をフィルに向けた。
「お前の母親はお前の父親にまったく相手にされていなかった。それでもどうしても領主
の妻になりたかった。だからわたしがその願いを叶えてやった。最初に生まれた子供を貰
うという約束でな。なのにお前の母親は約束を破り、わたしを騙して池に沈めた」
 祖父がフィルの母親を呆れた顔で見つめた。「お前は何ということを……」
「約束を守ってもらおう」そう言いながら女がフィルのほうに近づくと、突然エマが手を
広げ女の前に立ちはだかった。
「駄目よ、この人は大事な人なの。あなたに渡せない」気丈にも女の顔を睨みつけた。
「どうしてもと言うなら、わたしが代わりになる」その声は少し震えていた。
「エマ、駄目だ」フィルは驚いた。
 大広間にいる人々は何が起こっているのかわからないまま、目の前で繰り広げられる異
様な光景を眺めている。
「まったく母親でも言わないのにね」女は母親を横目で見ながら感心してエマに言った。
母親は虚ろな目をしたまま呆然と立っていた。
「でもお前さんには悪いがわたしは約束した子供が欲しいんだ。ゲボッ、ゴボッ」女は身
体をふたつに折りお腹に手をあて激しくせき込み始めたと思うと、大人の握りこぶしほど
もあるカエルを吐き出し倒れた。
「ヒッ!」母親はカエルを見るとひきつった声をあげた。
 皆が見守る中、カエルは「さあ、約束を果たしてもらおう」ゆっくりとフィルに近づい
ていった。フィルはとっさに踏み潰そうとしたが、カエルはさっとあとずさり、そのまま
にやりと笑うと口から小さな黒い粒を吐き出した。
 地面の下から腹に響くような鈍く重たい轟音とともに床が揺れ始めた。人々は何か恐ろ
しいことが起きているのを感じ、顔を見合わせ騒ぎ始めた。
 その隙をついてカエルは口を大きく、ありえないほど大きく広げ、フィルをぱっくり飲
み込んだ。あまりのとっさの出来事にエマはなすすべもなかった。
 それから起きたことはまるで夢を見ているようだった。とても悪い夢を。フィルの母親
が胸を押さえて倒れ、心臓が破裂した娘を祖父は抱え離れようとした。どこかで叫び声が
する。たくさんの足音がする。その間も地響きはひどくなるばかりで、建物がきしむ音が
不気味に響く。
 カエルの吐き出したのは地震の種だった。
 誰もが先を争って逃げ始めたときもエマは動かなかった。やがて高い塔が倒れる音がし
たとき、フィルを飲み込み膨れていたカエルがもとの大きさ戻りだした。エマは大きく目
を見開いていた。どうしていいのかわからない。カエルはしなびた木の枝のようなものを
吐き出した。エマはとっさにその枝をつかんで握りしめた。それはかすかに温かかった。
その後を追うように、薄い緑色を帯びた光の球がカエルの口からゆっくり出てきて浮かん
だ。
 あたりは逃げまどう人で大騒ぎなにもかかわらず、エマのまわりの空間は別の世界のよ
うに時が止まっていた。
 金メッキはこっそり近づき妹がもはや息をしていないとわかると、慌てて飛び出して行
った。鞄を抱え屋敷を後にしたが、途中でふと思いつき火のついたロウソクを倒して行っ
た。
 光の球はまっすぐ上空に飛んで行こうとしたが、思い返したようにエマのところに戻っ
てきた。
「お前には悪いことをしたな。しかたないんだ、約束は約束だ。お前はいい奴だ。このま
ま生きて行くのもつらいだろう。お前の記憶をすべてこの指輪に閉じ込めよう」そう言う
と床に落ちていた指輪とエマをを大きな光で包み込んだ。「それとこの種を。好きに使う
がいい。新しい人生を生きるんだな。もしこの指輪を見つけたらお前はすべてを思い出す。
でもやめておいたほうがいい」
 光が消えるとそこにはフィルの抜け殻を胸に抱きしめ、眠るように横たわるエマがいた。
そばできょろきょろあたりを見回していたカエルが床に落ちていた指輪を見つけると飛び
つきぱくっと食べた。
「何やってるんだ、この食い意地の張ったカエルめ!」〈小指の枝〉はカエルの足を捕ま
えて逆さに振った。そのとき、もうひとつの薄緑に光る球がすごい勢いで〈小指の枝〉の
ところに飛んできた。
「お前はいったい何をやっているんだ!」それは〈樹の幹の皮〉だった。
「お前が戻ってこないんで柳の樹は枯れ始めたぞ。魔女にもう一度、別な生命の力を願っ
たがすげなく断られた。〈朝露に光る葉〉は少しでも早く帰れないかとしゃかりきに働い
ている。仲間も俺達を残して柳の樹の中に吸収された。もう余分な力はないんだ。本当に
お前はいったい何をしているんだ!」
「そんな……」〈小指の枝〉は色をなくした。
 ふたつの光る球は慌てて空に駆け上った。途中〈小指の枝〉はまだカエルを掴んでいる
のに気がつくと、長い間閉じ込められていた池に落とした。忌々しい池だ。
「あばよ。まったくひどい目にあった」
 池に落ちた衝撃でカエルは飲み込んだ指輪を吐き出した。指輪はゆらゆらゆっくりと池
の底に沈んでいった。そしてカエルとフィルは気絶した。
 帰る道すがら〈小指の枝〉は持っていた悪の魔女の種を全部捨てた。ほんの偶然か、た
またまそのひとつが必死で逃げている金メッキに貼りついた。それはものの本質をさらけ
だす種。金メッキは呻き声をあげて苦しそうにうずくまった。身体が蝋のように溶け輪郭
を失なったかと思うと、違うおぞましい形に作り変えられて行った。それは黒く大きな羽
を持つ恐ろしい生き物で目に金メッキの名残があった。その化け物は足元の鞄をつかむと
どこかへ飛んで行った。


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